2016年3月18日金曜日

テスラの蓄電池、パワーウォール - 世界中の化石燃料を再生可能エネルギーに移行させよう

3.11のあと、脱原発派になった人たちは、再生可能エネルギーの話題もどんどん入ってきてシェアされているはずなのですが、不思議とあまり知らなかったことがあります。年度の変わり目で、太陽光発電システムや蓄電池を物色中の人も、あまり気づかないかもしれません。

2015年4月30日に行われた、テスラモーターズのCEO、イーロン・マスクによる、家庭用蓄電池テスラエナジーパワーウォールの感動的ななプレゼンの内容なのですが、これ、単なる商用のプレゼンとは思えない、かなり重要なことを言ってます。誰も訳してくれてないんでしょうか。

世界中のエネルギーを太陽光を主とする再生エネルギーに切り替えるには、それほど大変なのか。どれほどの場所が必要なのか。蓄電池はどうすればいいのか…。想像もつかないままの人が多いと思いますが、イーロンが答を出してくれます。

太陽光発電蓄電池について、日本のメーカーを調べていると、軒並み、売電による収入や補助金を使えば投資としていかにお得かという経済的な点ばかりに重点が置かれているのですが、そもそも今、再生可能エネルギーに移行する人たちには、できれば「オフグリッド」で電力の自給自足をめざす場合も少なくありません。原発を手放す気のない電力会社との縁を切りたいのです。原子炉を作って設けている大手電機の太陽光パネルや蓄電池を買って売上貢献したいとは思いません。

イーロン・マスクは、どうやって地球上から今のとんでもないエネルギー問題を解決していくか、という切り口で語っていて、まるで人気ラッパーのライブのあとかと思うようなノリのいい聴衆に向かって始終笑いながら話をすすめます。さらに、高コストの蓄電池の常識を破り、スタイリッシュな壁掛け型バッテリーを通常の半値以下の価格で販売するというのです。

国内の経済・工業・IT関連の報道では、このプレゼンで環境問題に触れていることにほとんど言及していないのですが、彼の本気度は単にセールストークではなく、本気にCO2削減を目指しているのではないかと思われます。


訛りが少ないといわれる南ア出身の英語ネイティブにしては、ものすごく早口で聞き取りにくい英語なので、下にキャプチャと和訳書き起こしを入れておきます。自動翻訳の日本語字幕を表示することもできますが、英語字幕ですら笑ってしまうほど滅茶苦茶になってます(爆!)。

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書き起こしここから。
みなさん、テスラエナジーのアナウンスメントにようこそ。

今夜お話するのは、地球上でいかにエネルギーが荒れ狂っていて、それ対して、どう世界が対応いているか、についての根本的な変化についてです。

これが、現在の状況。かなり悪いですね。

そう…ほんと最悪(笑)。そのとおり。はっきりさせておきたかった。ここのところを勘違いしている人たちがいるので。これが現実です。

これが世界のほとんどの場所での化石燃料によるエネルギーの作られ方。

むこうのチャートの、めちゃくちゃな曲線を見れば、大気中に放出されるCO2の上昇が、今後も年々加速することがわかります。

もし我々がここで何もしなければ、どうなっていくかを、右端の曲線が示しています。いずれは化石記録すら見えないレベルまで上昇します。

我々はみんなでこれをなんとかするべきだと思います。
我々のためにも、他の多くの生き物たちのためにも。

現在、集約的にどうなっているかというと、石炭、天然ガス、原子力、水力、風力、太陽光…。でも、明らかに、風力と太陽光はまだ十分ではありません。

これが、ほとんどの国の送電線網です。

使用量のピークと底を比較すると、ピークでは少なくとも底の2倍になっています。
これを憶えておいて下さい。このプレゼンでは重要なので、あとでこのことを参照します。

我々はソリューションを得るためにここにいます。

とても明白な解決策があります。我々がやらなければいけなかったことです。
ソリューションは2つに分かれます。
パート1は、太陽です。

我々は、太陽と呼ばれる、こんな便利な核融合炉を空に持っています。なにもしなくていいんです。勝手に働きます。毎日表れます。とんでもない量の電力を作れます。

多くの人は、米国が化石燃料で作るのと同じだけの十分な電力を作るためにどれだけの土地が必要かを気にします。

ほとんどの人は見当もつかず、こう思ってる気がします。ベイエナジーのの太陽光発電みたいに、宇宙に衛星を置かないといけないような広大な土地が必要だとか。

でも、これは全く不要なんです。実は、すごく小さな土地で十分なんです。
米国で使われている化石燃料の発電を全部放棄しても

あそこにある青い正方形。あれが、米国の電力状況をゼロカーボンの発電に移行するために必要な土地面積です。ほんとにそれほど広い土地はいらないんです。

その面積のほとんどは、屋根の上です。景観を損ねたり、新しい土地をみつけたりしなくても
すでにある家や建物の屋根でいいんです。

なので、太陽光発電にどれぐらいの場所がいるかと考えるときに、そのイメージを記憶しておくことはとても重要です。

太陽光発電の明らかな問題は、太陽は夜には輝かないということです。たいていの人は気づいていますが(笑)…。

この問題を解決する必要があります。
日中に作った電気を夜に使えるように、貯めておく必要があります。日中でも、発電量は変化します。昼間は夜明けや夕方より電気をたくさん作れます。

なので、夜、眠っている時も発電量を平らに安定させることが重要です。


気づかなかったかもしれませんが、さっきの青い正方形の中に、小さくて赤い1ピクセルがありました。

あの1ピクセルが、全米の電気を太陽光に移行するために必要な蓄電池のサイズです。すごくわずかな量です。

1ピクセル。憶えておいて下さい。
化石燃料を一切使わずに電気を作るために必要なのは、1ピクセルの蓄電池です。太陽光や蓄電池で大丈夫です。


ただ、蓄電池には課題があります。(Part 2です。)

既存の蓄電池は最悪。
見た目は本当にひどい。
あそこにあるように、高価だし、信頼性は低いし、臭うし、不細工だし、あらゆる意味でよくない。すごく高いし。

いろんなシステムを組み合わせないといけない。


みんなが欲しいような蓄電池をちょっと行って買ってこれるようなまとまった場所がない。

この問題を解決しなければいけない。それがミッシング・ピース。いま欠けているもの。それがあれば、持続可能なエネルギーの世界にちゃんと移行できる。

そのミッシング・ピースを今夜ここでお見せします。


(パワーウォールの現物登場。)<喝采>


(現物のパワーウォールをと映像のフュージョン。)







これが、その蓄電池。テスラパワーウォールです。


後ろのあの壁のほうを眺めると、これがいろんな色でたくさん並んでいます。

好きな色を選ぶことができます。壁にかかった美しい彫刻みたいです。

重要な事を指摘すると、
壁に設置できるということは必要不可欠です。

これにより、蓄電池室は不要になります。醜い蓄電池が並んだ部屋は要らないんです。つまり、ふつうの家庭がこれをガレージや家の外壁に設置できるということです。場所はとりません。壁に平らにぴったりとくっつくし、集約的安全システムが含まれています。例えば、箱から出してすぐに使えるDC-DCコンバータ。太陽光で非常によく動作するように設計されています。


もしあなたが蓄電池を買ってくるとしたら、どんなことが可能になるでしょう。

心の平和。電気代をカットできますね。いつでも電気があって寒い場所を暖められる。アイス・ストームが来ても、電気がなくなる心配もない。

もし望むなら、完全にオフグリッドに移行できる。太陽光パネルと蓄電池があればいい。それだけしか要りません。


つまり、蓄電池は安全安心を提供し、それも購入可能なコストでのソリューションになります。この(10kWhモデルの)価格は、3500ドルです。<歓声>

パワーウォールは、壁で複数個を接続できるように設計されています。

後ろの壁を見ていただくと、いくつかはペアになっていることがわかります。
9つまで繋ぐことができるんです。

非常に重要な事は、世界の辺境地で電線が全く来ていなかったり、電気が非常に限られていたり、非常に高価だったりする場所に、テスラのパワーウォールを持っていけば、どんどん拡張できます。

そうすれば、携帯電話vs地上電話で起こったようなことが起こります。携帯電話は実際に地上電話を追い越してしまいました。多くの国や辺境地では地上電話は必要なくなってしまいました

太陽光パネルとテスラのパワーウォールを持っていけば、電線があるかどうかは全然気にしなくてもよくなるわけです。これはすごいことになると思います。

電線は決して美しいものではありませんが我々の周囲にはあります。
この、どこに居ようと機能するソリューションは、いま電気が来ていないところに住む人たちにとって、ものすごく役立ちます。<歓声>

パワーウォールはいますぐウェブサイトから注文することができます。teslaenergy.comで、いま注文したら、3、4ヶ月ぐらいで出荷開始されます。

最初は生産はスローですが、
でも2年目はネバダのギガファクトリ―環境に移行するので、もっともっと上昇します。

(つなぎ方によっては10-90kWhになるパワーウォールのスライドを挿して…)
…ということで、家庭や小さな商業利用には、これはいいソリューションですが、

もっともっと大きな規模の場合は、別のものが必要になります。

そこで、パワーパックです。<歓声>
テスラ・パワーパックは、無限大に拡大できます。
ギガワットクラスでも使えるソリューションです。

もし、ギガワットクラス以上になると…

すでにパワーパックを使っている250メガワットのインシュレーションはあるんですが…、

ちょうどいいので、いまこのビルで使っている電力を蓄電池の電力を見てみましょう。
カメラは電力メーターのそばに行って下さい。

いいですね!もう電線からの電気はゼロ。
今夜はずっと、蓄電池の電気を使っています。
<歓声>
それだけではなく、これらの蓄電池はこのビルの屋上の太陽光パネルによって充電されています。

そう。今夜みなさんが体験しているすべてのことは、これは貯められた太陽の光で起きているんです。


私が拡張可能というのは、本当に拡張可能なんです。

パワーパックでギガワットクラスのインシュレーションを行うこともできます。

全システムが拡張可能に設計されていて

ボールダーのような小さな都市にもギガワットアワー・クラスのパワーパックで電力供給できるし…

と、ここでずっとしゃべっていてもいいけど、

何が必要なのか、世界を持続可能なエネルギーに移行させるために何が本当に必要なのか、考えてみましょう。

それって本当に可能でしょうか。
ほんとうに人類が実行できることでしょうか。
それとも、大きすぎて克服できないような、ものすごく困難なことでしょうか。

そんなことはありません。
1億6千万個のパワーパック(1万6千ギガワット)で、
アメリカ合衆国を持続可能エネルギーに移行させられます。


9億個のパワーパック(9万ギガワット)で、
世界中で作られている電気を再生可能な、特に太陽光に
移行させられます。


もう少し見てみると、
20億個のパワーパック(20万ギガワット)
すべての輸送とすべての発電、すべての暖房を再生可能エネルギーに
移行させることができます。

常軌を逸した数字に見えるかもしれません。
で、これを見るとこうしたくなります。腕をつかんで止めたく…。(右手をあげようとするのを左手で抑える)。

20億個のパワーパックというのは、クレイジーな数ですか?
不可能な数ですか?

そんなことはありません。道路を走っている自動車やトラックの数は約20億。
そして、20年毎に1億台は毎年生産されている新車に替わります。

つまり、ポイントは、このように人類がこれまで行なってきたことの力量の範囲内にあるということです。

不可能ではありません。できるんです。

それに、実は、いまはギガファクトリ―・ワンをスタートさせますが、
ギガファクトリーへの取り組みは、それ自体が製品みたいなものです。

人々が一般的に考える従来からの画一的な装置が入った建物、というイメージの工場ではなく

ギガファクトリ―が本当に設計しているのは、巨大な機械。
それ自体がテスラの製品。

ギガファクトリ―というほんとうに大きな製品を作っていて、
それはたまたま動かないだけ。
あそこでやってうるのは、ギガファクトリ―・バージョン1
ネバダで建設中です。
今後、たくさんのギガファクトリ―が必要になってきます。

テスラだけ単独でやっていこうとは思っていません。

他のたくさんの会社がギガファクトリ―・クラスを自分たちで作って稼働させていく
必要があります。やってくれることと期待します。

テスラはギガファクトリ―やパワーパック、特許をオープンソースにする方針を継続します。

もっとも重要なことは、それが可能だということ。それを我々は証明していきます。

あれが我々が可能にできる未来です。炭素排出はゆっくり上昇しますが、CO2増加量はゼロになります。 この未来を手に入れる必要があります。

太陽光パネルや蓄電池は、私ができるとわかっていることです。

私たちがやらなくてはいけない、やることができる、そしてやるつもりでいることです。

みなさん、今夜は来て下さってどうもありがとう。楽しんで頂けたとことと願っています。どうもありがとう。


書き起こしおわり。
*********

アップルのスティーブ・ジョブズのプレゼンを思い出させるような雰囲気でした。

以下、蓄電池市場に関して、最近の動向を少し補足しておきます。

太陽光発電システムを導入する世帯が徐々に増えています。今では新車一台程度の価格で導入でき、売電収入があれば10年で投資コストが回収できるといいます。モジュールの価格が十分下がってきたということで、国の補助金交付も2014年11月末で終了しました。(2015年10-12期の10kWh未満のシステムで、平均導入コストは37.1 万円/kW。)

一方で、蓄電池への補助金は継続すると思われていました。

しかし、2012年に始まった家庭用蓄電池購入のための補助金は、2015年度末(2016年3月末)で終了することになり、2月下旬に発表されました。エネ庁では蓄電池導入を推奨しており、まだ10万世帯程度にしか普及していなかったという家庭用蓄電池市場に何が起きているのでしょうか。

新築の家に導入する蓄電池に関しては補助金は継続するとのことで、蓄電池メーカーは比較的落ち着いているとも言われますが、すでに2014年3月時点で140件を突破している太陽光パネル導入では既築家屋のほうが多いので、妙です。

また、2019年から、太陽光パネルを導入した世帯の余剰電力買取制度(2012年以降は「固定価格買取制度」)による売電が終了することに伴い、蓄電池導入が進むと見られているので、それまでに競争体制を整えるのでしょうか。

これは、昨年から販売が開始された格安蓄電池、テスラのパワーウォールの影響ではないかと考えられます。

一般家庭で太陽光パネルと蓄電池を設置する場合、発電量は3~4kWh(キロワットアワー)、蓄電池容量は4~7kWh(キロワットアワー)ぐらいが一般的だと思われますが、蓄電池には売電による収入というメリットがない上に、現在のメーカー希望価格は200万円を超えており、100万円上限の補助金を使っても、購入者の自己負担が100万円を超えるのが普通とされてきました。

蓄電池は製造コストがなかなか下がらないので、低価格化が十分進むまで、まだ10年近くはかかると思われていましたが、テスラが発表したパワーウォールという壁掛け蓄電池は、7kWhモデルの本体コストが3000ドル(約34万円)。太陽光パネルを所有していれば、すでにパワーコンディショナ(インバータ)はあるはずなので、あとは設置工事のみ。これも、一般の室外用蓄電池より安価に済むかもしれません。

出荷は昨年夏から開始しているはずで、ネバダに建設される大規模工場の「ギガファクトリ―」で増産体制に入るのは2016年中。日本語のテスラモーターズのウェブサイトでもパワーウォールの予約を受け付けており、2016年上旬から2017年以降まで選べるようになっています。(ただし、2016年に生産できる分はすべて予約済みという情報もあります。)

こういうことを知ってしまうと、またいつものように、日本の大手電機などは、消費者が情報鎖国にいるのをいいことに、マスコミと手を組んで、テスラモーターズのパワーウォールについて、ほとんど情報を出さないようにしているのではないかという気がします。

今、蓄電池を買おうとする人は、3月末までなら急いで補助金申請をして100万円以上自己負担して契約するでしょうし、4月以降に買う人も、他にあまり選択肢がないのであれば、と3~4kWhの小さめのを、パワーウォールの倍くらいの自己負担額で購入するかもしれません。

一般家庭では10kWhなら雨が2日続いても持つといいます。言うまでもなく、価格を気にしなくていいのなら、容量は大きいほど安心してオフグリッド生活が送れます。同じコストなら容量の大きいものが欲しいところです。

知名度の高いCEOがプレゼンする蓄電池。すでに他の新興企業も低価格化を図った室内用の家庭蓄電池を売りだしていますが、大手電機が在庫を捌くまでは、マスコミは沈黙するのでしょうか。

不思議な事に、テスラの電気自動車のバッテリを生産し、ギガワットファクトリーでも出資して参入するパナソニックもパワーウォールに関しては沈黙したまま、自社の高額なバッテリを売り続けています。(ギガワットファクトリーではEV用蓄電池がメインで3割ぐらいが家庭用蓄電池になると言われています。)



イーロン・マスク 未来を創る男

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